本文へスキップ

つ む ぐ

「糸ぐるま」


がったん。ごっとん。  

  まわる 糸ぐるま。

細い糸 太い糸 よじれまるまる糸 幾重にも差し込まれた糸
ふしのある糸 陽に焼けた糸 しみを残す糸
突拍子もない色の糸 切れ切れの糸 ・・・・・


わたしの手元に うすくほこりをかむって 糸のかずかずが残されています。

糸車
手にとると、わた毛のように舞ってしまいそうで、
長いこと その糸のかずかずを、そっと見つめてきました。


糸たちは、このままほぐれて、ちりぢりに、舞っていくのがよいのでしょうか。



どの糸も、かつて誰かを包みあたためていた糸。
しっかりと。


わたしはこの糸たちを、このまま窓を開けて、空の彼方に旅立たせることが
どうしてもできません。




6月の北海道。 

その空の下で。  柳絮の舞う中で。



わたしはこころ決めました。

この糸たちをていねいに、ていねいに寄り合わせ、ふし目をつなぎ、
一本の<糸>にしていこう。


遠い記憶の糸ぐるまをまわそう。


きっと、途中がほつれたり、ちがう糸が混じるかもしれません。
誰の糸か、わからないものも。


それでも、わたしの手元に残る大切な糸。

いっしょにまわしていきましょう。



くるくる からから ことことと、
なめらかな音色を お聞かせできないかもしれません。



「父の思い出」は、たくさんの「つむぐ思い出」になりました。


これから、ゆっくりと、


    がったん。ごっとん。


古い糸ぐるまをまわしてまいります。



どんな音色になりましょうか。


ときどき、この音色をみなさまに、お聞きいただけましたら
うれしく存じます。

どうぞよろしくお願いいたします。

裕子

ナビゲーション